エイブリックの電源IC、その新たな挑戦とは

TechanaLye2021-06-17
株式会社テカナリエ

エイブリックでは、様々なイノベーション技術を駆使して高精度化、低消費化を進め、リチウムイオン電池保護IC各種車載用電源ICなど、同社の屋台骨を支える製品を次々と生み出してきた。今後、エイブリックの電源ICは、どのような新しいことに挑戦していくのだろうか。今回は、エイブリック株式会社チーフスペシャリストの須藤稔氏と株式会社テカナリエ代表取締役兼CEO清水洋治氏が、エイブリックの電源ICの未来について語り合う。

 

図1 エイブリックの挑戦①Small、Smart、Simpleに磨きをかける
図1 エイブリックの挑戦①Small、Smart、Simpleに磨きをかける

清水:前回のお話では、リチウムイオン電池保護ICが1993年発売とのことですが、このところ、80年代、90年代に生まれてコモディティ化された製品が、生誕30年モデルなど、形を変えて市場に再投入されています。こうした手法を使うこともできますね。

須藤:そうですね。今後のエイブリックは、そうした既存の製品を1パッケージ化することで、シンプルながら小型で高性能な製品として提供していきます。既に車載用の水晶振動子内蔵タイマIC 「S-35710MA」などが商品化されています。今後は、高信頼のEEPROMなどと組み合わせることで、プログラマブルでセキュアなICも提供していけると思います。

清水:とてもいいと思います。既にIC単体で売り込む形は限界が来ていて、今後はモジュール化、あるいはもう一つ上のレイヤーのチップセット化、キット化をしていかなければならない。御社の持っているコンポーネントにそうした“セキュア”などのキーワードを入れながら、センサーと電源ICのようなアナログ回路とメモリ、それに受動部品もとりいれて、どんな製品にも対応できるモジュールベースの半完成品、「お客様はほんの少し手を加えるだけでよく、お客様は自分の開発すべき部分に注力できる製品」として提供することはとてもよいことだと思います。1パッケージ化することで、半田剥がれなどの課題解決、防塵、帯電防止などの信頼性向上に加え、小型化、低消費電力化、部品数削減、つまりエコにも貢献できる。自動運転やロボティクスの時代にもメンテナンスフリーにしやすいなどの利点を提供できますね。

 

図2 エイブリックの挑戦②アジャイル高信頼IC開発の実現
図2 エイブリックの挑戦②アジャイル高信頼IC開発の実現

須藤:従来の大量生産から多品種少量生産、短TAT開発の時代となり、商品のライフサイクルも短く、顧客から要求されるスペックも短期間で変わるようになってきました。こうした状況に対応するため、エイブリックは低耐圧から高耐圧まで、様々な回路に対応する高信頼のプラットフォームプロセスを用意し、その製品ラインナップを公開していきます。これらを自由に組み合わせることで、アジャイルIC開発システムを実現することができます。

清水:いいですね。製品がこうして棚(カタログ)に載せてあれば、顧客がどれとどれを組み合わせたいかを選べることができます。そして、松竹梅、様々なレベルの組み合わせ製品開発ロードマップがあれば、顧客は、自身の欲しい組み合わせがあるか、いつリリースされるかを見て、それまでは暫定対応で進めておこうといった算段ができますね。

 

図3 エイブリックの挑戦③あらゆる微小エネルギーの有効活用
図3 エイブリックの挑戦③あらゆる微小エネルギーの有効活用

須藤:IoTの進化に伴い、トリリオンセンサの時代を迎え、それらセンサ用の電源をいかに確保するかが大きな課題となってきます。そこで、エイブリックでは、従来利用できなかった1μW以下の微小のエネルギーを蓄積、昇圧して無線通信を実現するCLEAN-Boost®技術を開発。既に漏水センサとして様々な現場で稼働開始しています。この技術をさらに進化させることで、様々な場所でのエネルギーハーベストを実現し、地球にやさしいバッテリーレスのIoTセンサを世の中に提供していく予定です。

清水:これも素晴らしい技術です。次の10年は間違いなくこのエナジーハーベストを含めて、低消費電力が大いに注目を集める時代になります。ぜひともこの技術をどんどん広めていってほしいと思います。

 

図4 不可能を可能にする技術を。
図4 不可能を可能にする技術を。

須藤:限りない資源を有効に活用するのが、電源ICの役割です。エイブリックでは、今後も環境にやさしい社会を実現するためにsmall、smart、simpleな電源ICを開発し、世界のエネルギー問題を解決するリーダーとして進化し続けていきます。

清水:2020年のコロナ禍にあっても、世界中のメーカーは次々と新しいことに取り組もうとしています。実はそうしたメーカーは、提案を待っています。これからもエイブリックならではの新しい提案が生まれてくることを期待しています。

 

執筆:株式会社テカナリエ
“Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語が会社名。年間300のエレクトロニクス製品分解、解析結果を基に、システム構造やトレンド解説、市場理解の推進を行っている。

 

関連情報

> エイブリックの電源用IC

> CLEAN-Boost®