身の回りの微小なエネルギーを電力に変換して活用するエナジーハーベスト(環境発電)。本コラムの第14回では、エイブリック株式会社のエナジーハーベスト技術である、 CLEAN-BoostⓇを紹介した。この技術を使っては、既に、微量な水分を使って発電し、水漏れを知らせる「バッテリレス漏水センサ」が2019年7月10日から発売されている(図1)。今回は、様々な現場で活用されているこの製品を取り上げる。
- ① センサリボン部:0.5m、2m、5mと長さの異なるセンサリボンをつなげて任意長のセンサを構築可能。
漏水を吸収することで、発電する。 - ② 無線タグ部 :センサの発電電力を蓄電し、通信に必要な電力が蓄電されたら、昇圧。
BLE(Bluetooth Low Energy®)で任意の受信機に無線送信する。
「バッテリレス漏水センサ」の主な特長は3つある(図2)。その名の通り、電池なしで動作すること、わずか数滴の水でも検知できること、そして、BLE(Bluetooth low energy®)を使って無線通知できることだ。これらの何がすごいのか。図3で従来型「漏水検知器」と比較してみよう。
他社製品A (中央制御型) |
他社製品B (床面据置型) |
バッテリレス 漏水センサ |
|
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電源 | 必要 | 必要 | 不要 |
センサ感度 | 数mL/分 | 製品裏面の電極板が 感知する量の水が必要 |
150μL/分 |
漏水時の 通知方法 |
警報ブザー 制御盤パネル |
警報ブザー ランプ点滅 |
無線通知 |
「漏水検知器」は様々なメーカーから様々な形状の製品として発売されている。大規模なものでは、漏水センサと集中監視制御盤が有線で接続され、漏水検知時には制御盤への表示や警告ブザーで通知を行うものなどがある。一方、床や地面に置き、水漏れを検知したら点滅ランプやブザー音で知らせるタイプのものもある。いずれにしても何らかの電源が必要となる。前者は電源を確保し、センサと監視盤をつなぐための設置工事が必要となる。後者も定期的な電池交換を必要とする。どちらもわずかな水滴の検知は難しい。また、漏水発生時にも、誰かがランプやブザー音に気が付かなければ、迅速な対応は難しい。
「バッテリレス漏水センサ」は、電源も配線も不要なため、工事の必要もなく、簡単に設置できる。つまり、どんな場所にも、後付けで設置可能で、定期的な電池交換すら必要としない。わずかな結露などでも支障がある水に非常に敏感な環境にも対応し、検知した情報は無線で通知可能なため、無人の場所でも運用できる。「バッテリレス漏水センサ」は、他の製品の追随を許さない、非常にユニークな超省エネ型超高感度IoT漏水センサなのである。
この「バッテリレス漏水センサ」は、大成建設株式会社との共同開発によるもので、既に、一般住宅から商業施設、工場やサーバールームなど、様々な現場に設置されている。また、追加の電源確保や配線工事などが不要であることから、老朽化したビルの地下にある電源制御室などの水害対策にも利用されている(図4)。様々な分野で既に引く手あまたの「バッテリレス漏水センサ」であるが、次回はその用途をさらに広げるためのいくつかの課題について考えていきたい。
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