垂直統合型メーカーの強みを生かして社内技術を結晶化。エイブリックの車載用保護IC「S-19192」「S-19190」

TechanaLye2020-4-1
株式会社テカナリエ

前回は、エイブリック株式会社の提供する、車載向けICの数々についてご紹介した。今回はその中から、車載用リチウムイオン電池保護IC/EDLC(Electric double-layer capacitor、電気二重層コンデンサ)電圧監視用ICについて、さらに言及していきたい。

昨今の自動車業界では、環境への意識の高まりに伴い、従来の鉛バッテリーからリチウムバッテリーへの置き換えが進むと同時に、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の普及により、バッテリーの重要性がますます高まっている。また今後の運転支援、自動運転機能実現に向けて、その安全性の確保がさらに重要な課題となる。

こうした中で、現在、エイブリックでは、車載用リチウムイオン電池保護IC/EDLC電圧監視用ICのラインナップとして、表1のような2つの製品を用意している。過充電監視に加え、過放電の監視が可能な12V電源対応S-19192、そして、電池とキャパシタ(EDLC)を対象とする、セルバランス(接続する電池のエネルギー容量均一化)機能付のS-19190である。
 

表1 エイブリックの車載用リチウムイオン電池保護IC / EDLC電圧監視用IC製品ラインナップ
シリーズ名 特長 過充電
検出
過放電
検出
自己診断機能 スタンドアロン監視
リチウムイオン電池保護IC
S-19192
・過放電検出機能付
・3セル~6セル直列用
2.5~4.5V 1.5~3.0V
EDLC電圧監視用IC
S-19190
・セルバランス機能付
・2.0Vからの過充電検出
2.0~4.6V - -

これらの保護ICは、主に車載用バッテリーやキャパシタの監視機能をバックアップする、セカンドプロテクトICとして活用を想定して開発されている。そして、その主要な機能として、表1右にも挙げた、故障検出率を高めるセルフテスト(自己診断)機能と、故障時のフェイルセーフ機能であるスタンドアロン監視が用意されている。

図2 自己診断機能(セルフテスト)
図2 自己診断機能(セルフテスト)

図2は、自己診断機能(セルフテスト)の処理の流れを示す。保護ICに接続するMCUからリセット信号とクロック信号を入力すると、保護IC内部の自己診断回路を介して、過充電、過放電検出回路が動作し、その結果を出力する。異常検出信号が返された場合には、保護IC内部の該当する検出回路が故障していることになる。

実際の車両では、イグニッション開始時などにこの自己診断が行われ、車両が動き始める前に、保護ICの偶発故障を発見できるようになっている。

図3 スタンドアロン監視
図3 スタンドアロン監視

図3はスタンドアロン監視のようすを図式化したものである。スタンドアロン監視とは、保護ICを直接上位システムと接続することで、MCUの制御から独立した形、つまり、ソフトウェアに依存しない形で、電池を常時、直接監視可能な機能である。図3左のように、電池のプライマリ監視ICに故障が発生して電池の監視が出来なくなった場合にも、エイブリックの保護ICをセカンダリ監視に使用し、上位システムと直接接続することで、電池の監視を継続することができる。

エイブリックの保護ICの特長はこれだけではない。同社の全ての製品に共通する徹底した超低消費電力への取り組みも、大きな魅力の一つだ。それは、トランジスタからプロセスまで、社内に培われたノウハウを最適化することで生まれる技術の結晶であり、設計から製造まで一貫して社内開発を行う垂直統合型メーカーの強みでもある。エイブリックはこうした環境の下、車載対応に向けて、プロセス改善、テスト強化、そして今回紹介した機能をはじめとする機能追加を進め、満を持して車載用保護ICを発表した。

図4 エイブリックの車載用保護ICの歩み
図4 エイブリックの車載用保護ICの歩み

図4のように、自動車はHV、EVから、遠からず運転支援、自動運転の時代に移っていくが、こうした時代の変化を見据えながら、エイブリックの保護ICは更なる機能追加、品質改善を行っていくという。今後も保護ICをはじめ、エイブリックの車載用全アナログICの歩みからは目が離せない。

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執筆:株式会社テカナリエ
“Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語が会社名。年間300のエレクトロニクス製品分解、解析結果を基に、システム構造やトレンド解説、市場理解の推進を行っている。