今回は、エイブリックの車載用IC製品の数々をご紹介していきたい。
エイブリックの車載用ICには、図1のように、国内車載シェアNo.1のシリアルEEPROMをはじめ、ボルテージレギュレータ(LDOレギュレータ)、ボルテージディテクタ(リセットIC)、スイッチングレギュレータ(DC-DCコンバータ)、リチウムイオン電池保護IC/EDLC電圧監視用IC、磁気センサ(ホールIC)、ウォッチドッグタイマ、リアルタイムクロック、コンビニエンスタイマ、アンテナ診断IC、オペアンプがある。これらのうち、車載用オペアンプ「S-19630AB」については、このコラムの第5回、第6回で紹介しているが、そのほか上記に列挙した各種ICもそれぞれ、エンジンやトランスミッションから各種カーアクセサリーまで、様々な用途に合わせた多彩な品ぞろえを用意している。
図2は、その代表的な製品を使った接続例となる。
まずは、図2上部で示すように、高耐圧バッテリー監視用リセットIC「S-19110」でバッテリー電圧を高精度に直接監視する。バッテリーからMCUへの供給電圧にはLDOレギュレータ「S-19213/4」、その供給電圧監視にはリセットIC「S-19100/1」、MCUの動作監視にはウォッチドッグタイマ「S-19400/1」が最適である。エイブリックの強みである低消費電流のICが自動車の各種ECUに求められる待機時消費電流削減を助ける。図2中段では、DC-DCコンバータ「S-19902/3」を1次降圧として使用して、2次降圧としてLDOレギュレータ「S-19243」や「S-19251/2」を用いて安定化する接続例である。図2下段では、カメラやアンテナのように接続診断が必要とされる場合の電源供給例である。接続診断機能付LDOレギュレータ「S-19700」で接続診断と電源供給を1chipで行うことが可能である。また、カメラモジュールに要求される小型化に貢献する小型パッケージ搭載電源のDC-DCコンバータ「S-19902/3」、LDOレギュレータ「S-19251/2」のラインナップもある。GPSアンテナではLDOレギュレータ「S-19212」と診断機能付ハイサイドスイッチ「S-19680」で電源供給と接続診断が実現可能だ。また、図2左に示すように、環境への配慮から進む鉛バッテリーからリチウムイオンバッテリーへの置き換えに伴い、その過充電や過放電によるトラブルを防止する電池保護ICとして「S-19192」、EDLCバッテリー向けの「S-19190」を提供している。
こうしたエイブリックの車載用ICは、36年に渡る同社の民生用電源管理IC開発で培われた技術を基に、超低消費電流、小型パッケージという強みを生かして車載市場で着々とシェアを伸ばしている。今後の取り組みを伺ったところ、まず、0.8V、0.7Vといった更なる低電圧出力化へのアプローチと、ASIC化を進めていくとのこと(図3)。今後、電気自動車(EV)の普及や運転支援機能の強化、自動運転へと進化していくにあたり、車には様々な機能が搭載されていく。その中には、従来の車載用チップより低電圧を必要とするものも少なくない。
また、車載用の電源管理ICをほぼ網羅する製品ラインナップを持つ強みを生かしてのASIC化にも、大きな期待が持てる。
もう少し大胆な見方をして、現在スマートフォンなどで起こっている変化、メインのプロセッサがセンサからの情報、カメラの画像、通信チップからの情報に基づくデジタル処理を一手に引き受ける集中制御構造への変化が自動車に起こったらどうだろう。自動車も今後更に電子部品が搭載され、自動運転への道を進めば、スマートフォンのような通信機能を搭載する巨大な電子機器と化していく。その際には、図4のように、右側に中央制御用プロセッサが配置され、カメラやセンサ類、アンテナなどが直接つながる形になることも考えられる。電源管理ICも、保護機能から監視機能、各種電圧制御機能、総力を挙げて、この中央制御プロセッサに電力を供給することになるかもしれない。
次回は、現在に立ち戻って、エイブリックの車載用ICラインナップの一つ、保護機能ICについて、理解を深めていきたい。