今回は、エイブリック株式会社の提供する、エナジーハーベスト(環境発電)による微弱な電力を利用して「電池レス」なシステムを可能にする技術、 CLEAN-BoostⓇ を紹介する。
エナジーハーベスト(環境発電)の活用方法としては、図1のように、わずかな光や圧力、温度差、振動、熱、水分など身の回りに存在するものは発する微小なエネルギーを「収穫」(ハーベスト)し蓄積することで、電池を使うことなくシステムを駆動する手法がある。
CLEAN-BoostⓇ は、立命館大学との共同研究から生まれた独自の蓄電昇圧回路技術で、こうしたマイクロワットレベルの電力を蓄積し、それを昇圧することで、無線通信可能なレベルの電圧を確保し、電池なしでの通信を実現する。
その処理の流れを図2で示すと、次のようになる。僅かな変化を捉えてエネルギーを発するエナジーハーベスタ(センサ)が事象をセンシングして発電するたびに(図2の①)、その微小電力が CLEAN-BoostⓇ の蓄電部に蓄積されていき、無線通信に必要なエネルギーが蓄積されたら、昇圧回路で無線通信に必要なレベルに昇圧し(図2の②)、無線部を介して、無線送信を行う(図2の③)しくみだ。
このエナジーハーベスタの部分を様々なセンサを接続することで、いろいろな情報を任意の対象に通知することができる。つまり、様々なセンサを使った「電池レスIoT」が、簡単に構築できるのだ。
この手軽さを実感し、かつ、実際にエナジーハーベスタを利用したシステム構築が体験できるものが、エイブリックが2019年4月より発売開始した「バッテリレス無線センサ実験キット」である。
このキットには、2種類のセンサが同梱されている。
図3は、土壌発電菌センサを含む実験キット接続例となる。土壌発電菌は、有機物をエサとして体内に取り込み、分解する際に体外に電子を放出する。この電子を負極で捉えると、負極と正極側の電位差により、電流が発生し、これを回収することで電気を得ることができる。キットでは、2枚のカーボンフェルトが土壌発電菌センサの役割をし、電子をキャッチして蓄電部に蓄電する。蓄電昇圧部と無線部は、土壌発電菌センサ用無線タグモジュールとしてモジュール化されており、その仕組みは図2で述べた通りである。無線部からは、BLE(Bluetooth low energy)を使ったBeacon信号送信が送信され、アプリケーションがインストールしてあれば、スマートフォンで受信できるようになっている。
発電菌は、養分の多い肥沃な土地では、より多くの電子を放出する。このシステムも、土壌の状態を簡単に見える化する装置として、実用化できるのではないだろうか。
図4は、同じくキットに含まれる水分発電センサの接続例となる。2種類の金属板から成るセンサ部が水に触れることで、微量の金属イオンが発生し、電子が電極間を移動する。これにより発生する電流を回収することで電気を得る。その後の流れは、発電菌センサ実験キットの場合と同じだ。つまり、センサ部分を差し替えるだけで、様々な電池レスIoTを実現できることになる。
この水分発電センサを用いたシステムについては、既に立命館大学との連携によるおむつや植物の導管を対象とした水分検知システムの実証実験が行われている他、大成建設株式会社との共同開発による、漏水センサなども既に商品化されている。
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