1. ワイヤレス給電とは?

ワイヤレス給電とは、物理的な導線を介さずに電力を供給源から需要先へ伝送することです。近年は電動歯ブラシやスマートフォン、工場の自動搬送ロボットなどで広く採用され、一般的なものとなってきました。
現在は比較的少ない電力の用途で実用化が進んでいますが、今後は電気自動車や電車など多くの電力を必要とする用途での実用化も期待されています。

ワイヤレス給電アプリケーション例

 

2. 代表的なワイヤレス給電の方式

一口にワイヤレス給電と言っても、複数の方式があります。大きく分けると比較的近い距離での電力伝送を行う「結合式」と、比較的遠い距離での電力伝送を行う「放射式」の2方式があります。
それぞれの方式を比べてみましょう。

分類 結合式 放射式
電磁誘導方式 電界結合方式 マイクロ波方式
磁気結合方式
(磁界結合方式)
磁界共鳴方式
イメージ 磁気結合方式 磁界共鳴方式 電界結合方式 マイクロ波方式
メリット ・給電効率が高い
・安定した伝送が可能
・比較的長距離の伝送が可能 ・大電力化が容易
・給電効率が高い
・長距離伝送が可能
・複数の受電が可能
デメリット ・距離が限定的 ・回路定数がシビア ・高電圧が必要
・距離が非常に限定的
・給電効率が低い
実用例 ・電動歯ブラシ
・Qi規格
・ABLICワイヤレス給電
・AGV(自動搬送機)
・EV充電
  ・IoTセンサ

現在は比較的距離の短い結合式の磁気結合方式が中心となって活用されています。
それぞれの方式を簡単に説明すると、以下のようになります。

磁気結合方式
(磁界結合方式)
電流を流した給電用コイルで発生する磁界によって、受電用コイルに誘導電力を発生させ、電力を伝送する方式
磁界共鳴方式 給電用共振回路と、同じ共振周波数を持つ受電用共振回路が共鳴することで受電用コイルに誘導電力を発生させ、電力を伝送する方式
電界結合方式 対向した送電用電極と受電用電極によって形成したキャパシタに高周波電流を与えることで受電側に電力を伝送する方式
マイクロ波方式 送電側で電力を電磁波に変換し、受電側のアンテナで電磁波を受信し整流することで電力を伝送する方式

共鳴 : ある物体に固有振動数と同じ振動数を外部から加えると、微力であっても物体が振動する物理的現象
共振 : 共鳴と同義にされることもあるが、電気的振動の場合に使う

それぞれの方式のメリットを活かそうと企業や大学などでさまざまな開発が行われています。

 

3. ワイヤレス給電のメリット

ワイヤレス給電は従来のケーブルを使った給電とは違い、さまざまなメリットがあります。ケーブルを抜き差しする手間が減ることはもちろん、コネクタが無いことによるデザイン性の向上、特殊なコネクタを使用しなくても防水対応ができます。
また、乾電池を使用している機器をワイヤレス給電に切り替えることのメリットは、電池交換の手間をなくすことだけではありません。乾電池を使い捨てることなく長期間にわたり機器を使用することができるので、サステナブルな社会の実現への貢献としても活躍します。

 

4. エイブリックのワイヤレス給電

エイブリックのワイヤレス給電ICは広く普及している電磁誘導方式のなかの磁気結合方式を採用しています。多くの国では特別な申請をすること無く利用できます。
また、低電力の電力伝送に特化した設計となっているので、非常に小型のシステムを簡単に構築することができます。