リチウムイオン電池保護ICの機能、回路構成
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1. リチウムイオン電池 (リチウムイオン二次電池) の種類
リチウムイオン電池は正極、負極に使用される材料によって、公称電圧*などの特徴が異なります。
以下の表に代表的なリチウムイオン電池の特徴を記します。材料の研究開発により、エネルギー密度、サイクル寿命などは改良が続いています。
*公称電圧 : 通常使用中の電池の平均電圧
電池名 | 正極材料 | 負極材料 | 公称電圧 (or 平均電圧) [V] | 重量エネルギー密度 [Wh/kg] | サイクル寿命 (SOC 0%↔100%) [回] |
---|---|---|---|---|---|
コバルト酸 リチウムイオン電池 | コバルト酸リチウム LiCoO2 | 黒鉛 (LiC6) | 3.7 | 150 ~ 240 | 500 ~ 1000 |
マンガン酸 リチウムイオン電池 | マンガン酸リチウム (スピネル構造) LiMn2O4 | 黒鉛 (LiC6) | 3.7 | 100 ~ 150 | 300 ~ 700 |
リン酸鉄 リチウムイオン電池 | リン酸鉄リチウム (オリビン構造) LiFePO4 | 黒鉛 (LiC6) | 3.2 | 90 ~ 120 | 1000 ~ 2000 |
三元系 リチウムイオン電池 | 三元系 (NMC系) LiNixMnyCozO2 | 黒鉛 (LiC6) | 3.6 | 150 ~ 220 | 1000 ~ 2000 |
ニッケル系 リチウムイオン電池 | ニッケル系 (NCA系) LiNixCoyAlzO2 | 黒鉛 (LiC6) | 3.6 | 200 ~ 260 | 約500 |
チタン酸系 リチウムイオン電池 | マンガン酸リチウム (LiMn2O4) | チタン酸リチウム (Li4Ti5O12) | 2.4 | 89 ~ 96 | 約3000 |
2. リチウムイオン電池の発熱、発火、爆発
リチウムイオン電池の危険な状態は以下のような状況で起こるとされています。
過充電による金属リチウムの析出*
過充電により、電池内部の負極表面に金属リチウムが析出します。これが樹状になると、セパレータを突き破り内部短絡を引き起こします。
*析出 : 電解液が結晶化し、固体となって電極に付着、堆積していく現象
内部電極材料の劣化による可燃性ガス発生
過充電や過放電により内部電極材料が劣化し、可燃性ガスが発生します。これがバッテリーの発熱や膨張を引き起こします。
発熱状態のトリガーとなる過充電や短絡 (ショート)
過充電や短絡が発熱状態を引き起こします。これにより、内部の化学反応が促進され、熱暴走が起こり、セパレータの破壊により内部ショートが発生します。
上記以外にも物理的な衝撃、経年劣化でも安全性が損なわれます。
リチウムイオン電池を安全に使用するためには、保護回路や充電制御、難燃構造にするなど複数のリスク管理が必要です。
3. リチウムイオン電池保護回路の種類
リチウムイオン電池保護回路は、一般的に「1. 専用の保護ICを使った回路構成」「2. マイコンとAFE (Analog Front End) ICを使った回路構成」の二種類があります。
4. エイブリックのリチウムイオン電池保護IC
バッテリー保護ICとは?
- バッテリー保護ICは、セルの過充電検出 / 解除、過放電検出 / 解除、過電流検出機能を備えたICです。
- 状況に応じ充電制御用FETおよび放電制御用FETをON / OFFすることで、充電電流や放電電流を制御します。
- セルの電圧を監視することで、過充電検出および過放電検出を行います。
- 過電流検出は、電流経路に実装された過電流検出抵抗または、制御用FETのオン抵抗の両端に発生する電圧を監視し行います。
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電圧監視用ICとは?
- 電圧監視用ICは、セル電圧を監視し過充電や過放電を検出した場合に外部に信号を出力するICです。通常、過電流検出機能をもたない製品を電圧監視用ICと分類しています。
- 電圧監視用ICはおもに複数のセルを直列に接続し、マイコンなどを使用して保護回路を構成している場合に使用されます。直列接続するセル数が多く複数の電圧監視用ICが必要な場合は、カスケード機能対応製品を使用できます。
- セル電圧の監視以外にもNTCサーミスタによる温度監視やセルバランス機能をもつ製品もあります。また、保護回路以外にも、セル電圧を監視して簡易の充電レベル表示に使用する製品もあります。
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セカンドプロテクトICとは?
- セカンドプロテクトICは、セルを二重で保護するために開発されたICで、危険とされる過充電状態からセルを保護します。このICはメインの保護回路と完全に独立しており、セルを常時監視します。
- 通常、充電回路やメインの保護回路によりセルの上限電圧以下に充電が制御されますが、これらが機能しなかった場合、セカンドプロテクトICが過充電を検出し、プロテクションヒューズによって電流経路を断線して充放電を不可逆的に停止させます。セカンドプロテクトICはメインの充電制限電圧よりもわずかに高い検出電圧に設定します。このように設定することで、メインの保護回路が正常に機能している場合は、セカンドプロテクトICは充放電経路を遮断しません。
- プロテクションヒューズが断線した後は、復帰が不可能となり、バッテリーパックは充電も放電もできなくなります。したがって、バッテリーパックの組立工程では、誤って断線しないようにヒューズをOpenにしたり、アクティブ信号が出力されないようにしたりするなどの注意が必要です。こうした組立上の管理負荷を減らすために、接続順フリー (ウェイクアップ機能) の製品もラインナップしています。
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5. 急速充電とは?
急速充電とは、非常に大きな電流で充電を行うことで充電時間を短縮する充電方法です。
USBタイプの充電器に "〇〇ワット" のような表示がされていますが、対応している機器同士であればワット (W) 数が大きいほどより早い時間で充電することができます。
急速充電のためには充電電流を細かく制御したり、温度上昇に対処したりする必要があります。
リチウムイオン電池保護ICの急速充電に適した機能としては以下のようなものがあります。
アラーム機能
急速充電中でもバッテリー電圧を高精度で検出し、アラーム信号を出力する機能です。
この機能によって、適切なタイミングで充電電流を制限したり、充電を停止したりすることが可能となり、電池の寿命を延ばしたり、安全性を向上させることができます。
バッテリー電圧モニタ機能
リチウムイオン電池の正確な電圧を充電システム側からモニタできる機能です。
この機能によって、正確な電池電圧をリアルタイムで外部監視することができ、急速充電の効率性を向上させることができます。
温度保護機能
外付けのNTCサーミスタで、温度の監視と充電 / 放電の制御を行う機能です。
この機能によって、高温時、低温時に充電 / 放電を制御することで安全性を向上させることができます。
6. エイブリックのリチウムイオン電池保護ICをもっと詳しく知る、試してみる
エイブリックのリチウムイオン電池保護ICについての詳細は
1セル用バッテリー保護ICのご紹介多セル用バッテリー保護ICのご紹介
をご参照ください。