1. 車載BMS (Battery Management System) とは?

車載BMS (Battery Management System) イメージ

車載BMS (Battery Management System、バッテリーマネジメントシステム) とは、主にEV、HEV、PHEVなどの電気自動車やe-Bikeなどのバッテリーを監視・保護し、バッテリーを安全かつ効率的に使用できるようにするシステムです。

電動化が加速する自動車において、車両の安全性に直結するBMSの役割はますます重要になっています。特に過充電や過放電などのバッテリーの危険な状態を検知する機能には、高い安全レベルが要求されます。そのため、車載BMSにはISO26262による機能安全対応が求められることが一般的です。

さらに、自動運転技術の発展に伴い、安全機構の強化も求められています。現在では、機能停止 (フェイルセーフ) だけでなく、機能継続 (フェイルオペレーショナル) の重要性も増しています。

 

2. 車載BMSのバッテリー監視機能の構成

車載BMSのバッテリー監視は一般的に、プライマリ監視系と、セカンダリ監視系の二つで構成されます。

  • プライマリ監視 :
    AFE (Analog Front End) ICとMCUで構成
  • セカンダリ監視 :
    車載用バッテリー保護ICで構成
プライマリ監視 : AFE (Analog Front End) ICとMCUで構成

プライマリ監視系は、一般的にバッテリーを直接監視するアナログフロントエンド (AFE) と呼ばれるICと、それらを制御するマイコン (MCU) で構成されます。車載バッテリーは高電圧を得るため多数のセルが直列接続された構成をとるため、AFEもカスケード接続で複数接続される構成をとります。

プライマリ監視系は、その他にAFEとMCUの間の通信インターフェースとなるブリッジIC、MCUの動作を監視するウォッチドッグタイマ (WDT)、MCUに電源を供給する電源IC、電源ICの出力電圧を監視するIC (VD) などで構成されています。

プライマリ監視

セカンダリ監視 : 車載用バッテリー保護ICで構成

セカンダリ監視系は、プライマリ監視と同様にバッテリーの監視を行います。セカンダリ監視系を設けることで、BMSはより安全性が向上した堅牢なシステムとなります。

セカンダリ監視系を設けることで、次のようなメリットが得られます。

  • プライマリ監視系が故障した場合でも、バッテリーの監視を継続することができる。
  • より簡単にBMSの機能安全レベルを向上させることができる (ASILデコンポジション) 。

セカンダリ監視

 

3. セカンダリ監視のメリット

車載BMSにセカンダリ監視系を設けることのメリットについて詳しく説明します。

監視継続性

第一のメリットは、プライマリ監視系が万が一故障した場合にもセカンダリ監視系が継続してバッテリーの監視を行うことができる監視継続性です。

ISO26262では影響の大きい故障モードに対して、速やかに故障を検知し、安全性を確保することが求められます。車載BMSにおいて、プライマリ監視系で故障が検出された場合には、システムを通じてドライバーへ通知されます。しかし、バッテリー監視が継続できない事態になれば、安全のためにそれ以上の走行はできない可能性があります。

車載BMSがセカンダリ監視系を備えていた場合、プライマリ監視系が故障した場合にも、バッテリーの監視を継続することが可能です。このような監視継続性を実現することは、機能継続 (フェイルオペレーショナル) の考え方に則っています。特に、今後さらなる拡大が予想される自動運転システムにおいては、トラブル時にもドライバーに代わって自動運転システムが判断・対応をするケースが増えることが予想され、このような監視継続性はますます重要になってきます。

監視継続性

 

ASILデコンポジション

第二のメリットは、プライマリ監視系のみで構成する場合よりも、簡単にBMSの機能安全レベルを向上できることです。

ASILデコンポジション

例えば、BMSの機能安全の要求レベルがASIL-Dの場合、監視系を構成するAFEやMCU、プリッジICなどの各部品もASIL-Dに対応させなければなりません。また、MCUに搭載されるソフトウェアも、同様の機能安全レベルが必要となります。ASIL-D対応のために、構成部品の複雑さは増し、開発工数やコストが増大します。

それに対して、セカンダリ監視系を追加すると、ASIL-D要求をデコンポジションで分解することができるため、より容易にASIL-Dを達成することが可能となります。既存の監視系がASIL-Cの要求レベルを満たしている場合、デコンポジションが可能なセカンダリ監視系を追加することで、BMSレベルではASIL-Dを達成できます。

ただし、デコンポジションが成立するには、プライマリ監視系とセカンダリ監視系がそれぞれ独立していることが必要であり、かつ共通原因故障がない (プライマリもセカンダリも共に機能が失われるような故障モードが無い) などの、いくつかの条件が満たされる必要があります。

 

4. なぜエイブリックの車載用保護ICはセカンダリ監視に最適なの?

エイブリックの車載用バッテリー保護ICは、セカンダリ監視系に最適なICです。

MCUフリーでバッテリーを監視

エイブリックの車載用バッテリー保護ICは、MCUによる制御が不要なスタンドアロン動作が可能です。セカンダリ監視系の回路が簡略化できることに加え、ソフトウェアの開発も必要ありません。

常時動作と低消費電流を両立

エイブリックの車載用バッテリー保護ICは、過充電や過放電などの、より危険なフォールトに絞った監視機能を提供します。そのため、バッテリーを常時監視していても消費電流が小さく、BMSの暗電流増加が抑えられます。

認証取得プロセスで開発

エイブリックは、第三者認証機関であるSGS-TÜV Saar GmbH (ドイツ) より、ISO26262の開発プロセス認証を取得しています。規格に基づき、SEooC開発されたエイブリックの車載用バッテリー保護ICは、高度な安全性が求められる車載BMSに最適です。

デコンポジションの容易さ

前述の通り、プライマリ監視系とセカンダリ監視系のデコンポジションが成立するためには、プライマリとセカンダリが互いに独立しており、共通原因故障がないことが求められます。

エイブリックの車載用バッテリー保護ICは、AFEとMCUの組み合わせとは全く異なるタイプのICであり、かつバッテリーから直接電源を得て監視するため、独立性や共通原因故障の心配がありません。

S-19192シリーズS-19193シリーズは、IC単体でASIL-Bを達成しているため、ASIL-Cのプライマリ監視系と組み合わせることで、ASIL-Dの車載BMSを構成することができます。

 

5. アプリケーション回路例

車載用セカンド保護IC S-19193シリーズを用いた保護回路例
RSTO CASI2 CASI1 VDD VSS RSTI OUT2 OUT1 SPI/UART CASI2 CASI1 VDD VSS RSTI OUT2 OUT1 RSTO RSTO CASI2 CASI1 VDD VSS RSTI OUT2 OUT1 CASI2 CASI1 VDD VSS RSTI OUT2 OUT1 RSTO

 

6. 車載用バッテリー保護IC / EDLC電圧監視用IC 製品ラインナップ

製品名 データ
シート
セーフティ
マニュアル
機能安全
カテゴリ
セル数 過充電 過放電 カスケード
接続
セル
バランス
パワー
セービング
セルフ
テスト
オンライン購入
1 2 3 4 5 6 7
以上
S-19193

機能安全
準拠
chip1stop corestaFF ONLINE Digi-Key MOUSER
S-19192

機能安全
準拠
chip1stop corestaFF ONLINE Digi-Key MOUSER
S-19190

機能安全
サポート
chip1stop corestaFF ONLINE Digi-Key MOUSER

 

7. パッケージ一覧

パッケージイメージ

 

8. 車載用バッテリー保護IC / EDLC電圧監視用ICを試してみる

エイブリックの車載用バッテリー保護IC / EDLC電圧監視用ICはオンラインにてご購入いただくことができます。ぜひご検討ください。