ここではゼロドリフトアンプの原理・方式を紹介します。
オペアンプの基本的な用語や回路例は、「オペアンプとは?」でくわしく紹介しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
1. ゼロドリフトアンプとは
オペアンプの入力オフセット電圧は0Vであることが望ましいですが、実際は、オペアンプを構成するトランジスタの特性バラツキなどにより、入力オフセット電圧が生じてしまいます。また、入力オフセット電圧は、周囲温度や時間経過により変化します。この変化を、入力オフセット電圧のドリフトと呼びます。
ゼロドリフトアンプとは、入力オフセット電圧および入力オフセット電圧のドリフトを限りなく最少(≒ゼロ)にしたオペアンプです。
ノイズの発生を抑えた高精度な信号増幅が求められるアプリケーションにおいては、ゼロドリフトアンプを選択することが非常に有効です。
ゼロドリフトアンプは、オペアンプの内部に自動的にオフセット電圧を補正(キャンセル)する回路を内蔵しており、その実現手段は大きく3種類に分けられます。
- オート・ゼロ方式
- チョッパー方式
- オート・ゼロとチョッパーを組み合わせた方式
【オート・ゼロ方式】
通常のオペアンプ(Mainアンプ)の他に、補正用のアンプとコンデンサ、信号経路を切り替えるスイッチが内蔵されています。
補正用アンプは、Mainアンプの入力オフセット電圧を測定する役割を担います。測定した情報はコンデンサに蓄えられ、この情報をもとに入力オフセット電圧を打ち消すよう、Mainアンプに補正をかけます。
これにより、入力オフセット電圧を限りなくゼロに近づけています。
【チョッパー方式】
チョッパー方式の動作原理は、少し難解です。
入力信号は、スイッチで構成された入力変調回路にてAC信号に変換されます。その後アンプで増幅され、出力復調回路にてDC信号に戻されます。
一方、入力オフセット電圧は入力変調回路を通らないため、出力復調回路にてAC信号に変換された状態となります。このため、出力部分にあるLPF(ローパスフィルタ)で、AC信号に変換されている入力オフセット電圧の情報のみが取り除かれることになります。
これにより、入力オフセット電圧を限りなくゼロに近づけています。
2.エイブリックのゼロドリフトアンプ
エイブリックは、民生用のゼロドリフトアンプとしてS-89630AとS-89713シリーズを、車載用のゼロドリフトアンプとしてS-19630AとS-19611Aをラインアップしています。
S-89630A(民生用)とS-19630A(車載用)は、オートゼロ方式とチョッパー方式を組み合わせた方式によりゼロドリフト動作を実現した、広電圧範囲(4.0~36V)動作・低オフセット電圧の特性を併せ持つオペアンプです。
S-89713シリーズ(民生用)とS-19611A(車載用)は、オートゼロ方式によりゼロドリフト動作を実現した、2.65Vからの低電圧動作・低オフセット電圧の特性を併せ持つオペアンプです。S-89713シリーズ(民生用)は、超小型パッケージ(SNT-8A、1.97×2.46mmサイズ)品もラインアップしています。
ゼロドリフトアンプをお探しの場合は、エイブリックのオペアンプもぜひご検討ください。