エレクトロニクスメディア「Electronics Weekly」へ2024年3月6日付にて掲載されたエイブリック代表取締役社長・田中誠司の記事をご紹介します。
アナログ半導体メーカー、エイブリックは、50年以上にわたる豊富な歴史を背景に、2018年に新たな社名で新しいスタートを切った。約5年を経た2023年6月、田中誠司が新社長に就任し、企画開発力と高付加価値製品に焦点を置きつつ、特に欧州市場への取り組みを強化している。
エイブリックは、2023年11月、自動車向けの機能安全規格「ISO 26262」において、最も厳しいレベル「ASIL D対応」の開発プロセス認証を取得した。さらに、ドイツの車載関連企業にとって重要なVDA6.3認証を取得するなど、お客様の監査に対応できる体制を整え、着実に基盤を強化している。
田中社長は、半導体業界で35年にわたり世界中のお客様と直接対話し、営業とマネジメントの経験を積み上げてきた実力者だ。日本モトローラの半導体事業部で営業を担当し、フリースケール・セミコンダクタジャパン株式会社で営業統括本部長を務めた後、2012年にセイコーインスツル株式会社に加わった。2018年にはアナログ半導体専業メーカーとして独立したエイブリックの執行役員に就任し、2021年6月からは経営統合を行ったミネベアミツミの半導体部門事業執行役も兼ねている。
田中社長が就任して以来、新製品のリリースに積極的である。直近では、異常通知機能付き車載用ボルテージトラッカ、業界最高PSRRと業界最速過渡応答を両立した高耐圧LDOリニアレギュレータIC、業界最高クラスの高速検出で高度な機能安全を実現したウィンドウボルテージディテクタなど、特に車載市場向けの製品群に力を入れている。
エイブリックの今後の方向性について、田中社長は明確なビジョンを示しており、「他社と機能的に差別化できる、付加価値の高い製品の開発に注力していく。今年はグローバル市場で半導体設計を展開している専門家集団株式会社SSCとの事業統合も行った。SSCは、デジタル・アナログとフロントエンド・バックエンドにおいて経験豊富なスキルを保有している技術者集団だ。エンジニアリングリソースの強化に加え、長年にわたり医療機器分野の半導体企画・開発を牽引してきたリーダーを、開発全体を統括するCPO(Chief Product Officer)に据え、欧州車載市場においても、初期企画段階からエンジニアとのコミュニケーションを重視し、高付加価値製品を開発する」と語る。
また、エイブリックが半世紀以上にわたって築いてきた小型・低消費電力化を表す「Small・Smart・Simple」というビジョンに基づき、今後は単機能製品から複合機能製品へのシフトを図り、お客様のニーズに密接に対応する開発に注力する。また、お客様の課題解決に向けたシミュレーションデータ提供など、より一層の提案型サポート体制の強化も進めている。
エイブリックの高付加価値製品として、車載用製品においてはAEC-Q100 Grade 0対応など広温度範囲での高精度動作、多機能をワンチップに集約した高機能製品やADASやADシステムの安全性向上に貢献する業界屈指の機能を備えた製品などがある。また、医療機器用超音波イメージングICの開発にも取り組んでおり、すでに欧米医療機器メーカーの超音波診断装置へ搭載がされている。さらに、わずかな水分や発電菌などで発電したエネルギーを蓄電・昇圧し電力に変換して無線通信などを可能にするエイブリックの独自技術、CLEAN-Boost®は、IoT開発で無限の可能性を秘めSDGsへの貢献も期待されている。日本ではすでにこの技術を活用した「バッテリレス漏水センサ」がビルや工場で採用されており、今後は海外展開も視野に入れている。
エイブリックは、欧州市場においても、ECサイトも活用した包括的なネットワークとFAEを含む充実したサポート体制を整備している。実際、車載分野でも欧州の大手Tier1サプライヤーに製品が採用されており、製品は世界中の車載、医療、民生、産業分野の製品を支えている。エイブリックは、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、再生可能エネルギー導入に向けた準備を進めている。
エイブリックは、ミネベアミツミグループにおいてアナログ半導体事業の一翼を担っている。アナログ半導体事業は、2030年までに売上高を3,000億円規模に引き上げるという野心的な目標を掲げている。エイブリックは、その実現に向けて、着実なステップを踏み出している。
本記事は2024年3月6日にElectronics Weeklyに掲載した記事の日本語版です。
● 本件に関するお問い合わせはこちらまでお寄せください。