セイコーインスツル株式会社(社長:村上 斉、本社:千葉県千葉市、以下:SII)の子会社で、半導体の製造・販売を行うエスアイアイ・セミコンダクタ株式会社(社長:石合 信正、本社:千葉県千葉市、以下:エスアイアイ・セミコンダクタ)は、東北大学大学院工学研究科 須川成利教授・黒田理人准教授の研究グループと共同で、UV-AからUV-Bまでの紫外線領域(*1)を検知するシリコンを使った紫外線(UV)センサ(*2)の量産化技術を開発しました。高感度フォトダイオードと低感度フォトダイオードの差分を取ることにより、フィルターなしで可視光領域をカットすることができます。フィルターがないため透過率の低下を防ぐことができます。また、小型の樹脂パッケージに搭載したことにより、スマートフォンやウェアラブル端末での使用が可能となります。今回、共同開発した量産化技術は、UV-AからUV-Bの波長帯を効率よく受光するセンサをエスアイアイ・セミコンダクタの自社ファブ(前工程)(*3)で製造する技術になります。
近年、ヘルスケアの分野において、日焼けやシミなどの予防に関する関心が高まりつつあります。スマートフォンやウェアラブル機器などで紫外線が簡単に計測できれば、健康管理や美容医療への貢献が期待されます。また、産業分野においてもUV硬化装置やUV硬化インクを使った印刷機などの紫外線を扱う機器が増えており、見えない紫外線を計測するニーズが高まりつつあります。
今回、シミやしわの原因となるUV-Aから、日焼けの原因となるUV-Bまでを、シリコン半導体で計測することを可能にしました。小型の透明樹脂パッケージを採用し、ウェアラブル機器での計測が可能になり、誰でも紫外線を簡単に確認できることが期待されます。2018年春に量産製品の出荷を計画しています。なお、試作品として、2017年1月開催のウエアラブル展でエスアイアイ・セミコンダクタが出展したUVセンサ搭載の展示物は、本技術を応用して作製したものです。
エスアイアイ・セミコンダクタは、従来より温度センサ、磁気センサなどのシリコン半導体を使用したセンサを開発・製造しております。今回、東北大学と共同で紫外線センサを開発し、将来的には周辺部品を取り込んだ製品をラインナップし、ウェアラブル市場、IoT市場などでの実用化に向けて、健康管理や産業用途へのニーズにも応えることを目指します。
(*1) UV-AからUV-Bまでの紫外線領域: UV-Aは315~400nm、UV-Bは280〜315nmの波長帯
(*2) シリコンを使った紫外線(UV)センサ: 化合物半導体のセンサは特殊な化合物ウェハを用いて製造していますが、シリコン半導体は汎用性が高く、シリコンを使ったセンサは将来的な回路の集積化や高機能化への発展性に優れています。
(*3) ファブ(前工程): ファブは半導体製造工場のこと。前工程はICチップを作る工程のこと。
【主な特長】
1. UV-AからUV-Bまでの紫外線波長をセンシング
シミやしわの原因となるUV-Aから日焼けの原因となるUV-Bまでをセンシングすることができます。健康管理への貢献が期待されます。
2. 2つのフォトダイオードの差分によりフィルターが不要に
従来、シリコンフォトダイオードで可視光をカットする場合、専用フィルターにより可視光成分をカットしUV-A、UV-Bの波長帯を測定していました。今回、紫外光に対して高感度なフォトダイオードと低感度なフォトダイオードの2つのフォトダイオードで構成し、その差分を計測することで、フィルターなしで可視光成分をカットしUV波長帯で感度を際立たせることを実現しました。
3. 小型透明樹脂パッケージを使用
表面実装タイプの小型の透明樹脂パッケージを使用し、ウェアラブル機器にも使用できるセンサを開発しました。小型のため、実装の制約が少なくウェアラブル機器のデザインの自由度が増します。