1. 高まる高精度な信号処理ニーズと高速ADコンバータ
近年、AIなどの進歩により、システムには高精度の認識や判断が求められております。今後は、ファクトリーオートメーション(工場の自動化)など瞬時に画像認識をしなければならないシステムの増加が予想され、認識精度を高めるためにさらなる高精度のデータ処理が要求されます。このようなシステムには、光度、温度、速度等の物理的な情報(アナログ信号)をセンサで収集し、それをデジタル信号に変換した上で、瞬時に適切な判断を行う信号処理装置に受け渡す必要があります。したがって、システムにはアナログ信号をより高精度かつ高速にデジタル信号に変換する高速ADコンバータ(高速ADC)が不可欠です。
エイブリックのADコンバータは、高精度・高速変換を特長としており、15年以上にわたり、世界中の医療機関やクリニックで利用されているエイブリックの超音波診断装置用ICと組合わせることによって、高速、高精度、低消費電力のシステムが実現可能です。
2. エイブリックの高速ADコンバータの特長
パイプライン型のADコンバータ
ΣΔ方式や逐次変換方式と並ぶ主要な変換方式のADコンバータです。
パイプライン方式は高速かつ高分解能を特徴としており、画像処理など高速変換が必要なシステムに最適です。
ADコンバータの方式別変換速度比較
省電力モード切り替え (Low Power Mode)
低消費電力動作が必要なバッテリー駆動機器などのポータブル向けに最適です。通常動作のNormal ModeからLow Power Modeに動作を切り替える事により消費電力を1/2程度に低減できます。
最大8chの各ch PowerOff機能
8チャネルの各ブロックはチャネル別にパワーダウンが可能です。関連するレジスタの各ビットに1を書き込む事で、対応するチャネルのADCとシリアライザ及びLVDSドライバのパワーダウンができます。チャネル別にパワーダウンする事により、こまかな消費電力制御が可能になります。
過熱保護インジケータの設定温度が変更可能
IC及び全体システムの異常過熱検知用にインジケータを搭載しています。インジケータの検知温度はレジスタの設定によって選択できます。選択できる検知温度は110℃,130℃,150℃ となります。
ICが何らかの原因で異常な温度を検知した際に信号出力されます。設定温度を最適化する事によりシステムの故障や誤動作のリスクを低減できます。
LVDS波形品質向上のためのダブル終端機能/LVDS電流値変更機能
ダブル終端機能
LVDS出力(送信)側と受信側の双方で伝送配線とのインピーダンス整合をとることで、伝送配線での反射の影響を抑制します。
また、伝送配線の寄生容量による高周波での出力信号振幅の減衰を抑制します。
LVDS電流値変更機能
LVDS出力電流を増加させることにより、差動出力振幅電圧レベルを増加させます。それにより伝送経路における外乱の影響を抑制します。
併せて伝送配線の寄生容量による高周波での出力信号振幅の減衰を抑制します。
また、LVDSインターフェースの誤認識を排除させオーバーシュートによるノイズを低減します。
アプリケーション例
- 医療用画像診断装置(超音波、CT、MRI)
- 計測機器
- 試験測定機器
- 非破壊検査
- 産業オートメーション
- 携帯電話基地局
- 魚群探知機
- 光通信機器
- 無線通信機器
8ch LVDS出力 高速ADC S-US85A1
特長
- オフセット・バイナリ形式の12ビット分解能8チャネルADC
- 50Msps サンプリング・レート
- SN比 69.8 dB at 5.3 MHz
- SFDR 78.8 dBc at 5.3 MHz
- シリアル300MHz LVDS出力
- オフセット・バイナリデジタルコードLVDS出力
- ワイド差動アナログ入力 2.0Vp-p
- 1.8 V ~ 3.3 V CMOS 制御ロジック インターフェイス
- 通常動作と低電力動作をレジスタで選択可能
- 通常動作 138mW/ch
- 低電力動作 78mW/ch
- パッケージ: 84リード 10x10mm QFN