製品・サービスを通じた持続可能な社会への貢献
エイブリックの半導体製品は、多くがクオーツ式腕時計の開発過程から生まれ、そこから派生して展開してきたものです。腕時計という狭いスペースに実装することが求められること、そして、電池駆動のため限られた電力で長時間動作することが求められるなど、自ずと「小型・低消費電力」が製品開発の根底に根付いています。スマートフォンや家電、自動車など、幅広い用途に使われるようになった現在でも、「小型・低消費電力」を特長とし、エネルギー消費を抑え、完成品の省エネ化にも寄与する半導体製品を開発・提供しています。さらに、光や振動、体温などから発生する微小な電力を、当社独自の昇圧IC※1などを用いて活用する「エナジーハーベスティング(環境発電)」の研究・活用にも積極的に取り組んでいます。
※1 ICとは、Integrated Circuitの略で、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサーなどを1つの半導体チップや基板の上に集積し、金属薄膜で配線して作った電子回路のこと。
社会の持続可能な発展に貢献する製品例
社会課題解決に貢献する弊社グループの製品・サービスの事例を報告します。
超低消費電力・低電圧動作
超低消費電力のICを幅広くラインナップしており、中でもLDOレギュレータ「S-1318シリーズ」は従来品(350nA)に対して95nAという超低消費電流を実現した製品で、ウェアラブル機器やIoT機器などのバッテリーの長寿命化に貢献しています。また、業界トップクラスの低静止時消費電流(260nA)の「S-85Sシリーズ」DC-DCコンバータやボルテージディテクタなども開発・提供しており、バッテリーの交換頻度を減らすことで資源利用量を削減し、環境負荷の低減に貢献しています。
超小型化への取り組み
携帯機器の小型化、高機能化に伴い、使用されるICにも一層の小型化が求められています。当社では0.8mm×0.8mmという超小型サイズのIC製品(HSNT-4)を開発しました。これにより、本製品の樹脂使用量を大幅に削減すると共に、本製品を実装する基板の小型化にも貢献することで、環境負荷の低減に貢献しています。
「CLEAN-Boost®」技術
金属と水の反応や、体温、振動、土壌にいる細菌などが発電する微弱な電力を、当社グループ独自の蓄電・昇圧技術等を駆使して活用するのが「CLEAN-Boost®」技術です。これまでは発電量が小さすぎて使う用途がなかったエネルギーを活用できるようになることで、無線発信等のエネルギーとして活用する研究を進めています。その場で発生した電力を電源として用いるため、電力供給が難しい場所で使用するセンサなどの電源として極めて有望であり、かつバッテリーを必要としないため、センサを使用できる領域の拡大と環境負荷の低減に大きな期待が持たれています。
<実例1 CLEAN-Boost® 実験キット>
2019年4月、CLEAN-Boost® 実験キットをリリースしました。
本実験キットは「CLEAN-Boost®」技術を広く理解、ならびに活用頂くために、発電特性の異なる水分発電センサと発電菌土壌センサを同梱し、スマートフォンで発電の状況がモニタリングできるキットです。さらに自前のセンサにつなぎ変える事で独自のセンサによる電池レス化の実験が可能です。
<実例2 バッテリレス漏水センサ>
2019年7月に世界初、無線で漏水を知らせる、バッテリレス漏水センサをリリースしました。本製品は大成建設㈱との共同研究から生まれたもので、電源を一切使用しないため大掛かりな工事も必要なく、電池交換の手間もいりません。このため、電源確保が困難なため漏水センサを設置できなかった場所でも簡単に後付けで設置することが可能です。本センサの設置により、初期段階での水漏れを感知することが可能となり、トラブルの発生や被害の拡大を未然に防ぐことができます。コストと時間の両面で大幅な省力化が実現でき、環境負荷軽減にも大きく貢献します。
バッテリレス漏水センサ
【設置例】
設置方法は無線タグをつけた漏水センサリボンを巻き付けるだけ。
利用シーンは、住宅、商業施設、インフラ設備、工場設備、サーバールームなど。
<「CLEAN-Boost®」技術の受賞歴>
(1)2019年10月、「CLEAN-Boost®」技術に関し発表された技術論文「150-nW(※2)FD-SOI Intermittent Startup Circuit for Micropower Energy Harvesting Sensor」が、アメリカのカリフォルニア州サンノゼで開かれた「IEEE S3S Conference」において「Best Paper Award」を受賞しました。
(※2)nW (ナノ・ワット):1W(ワット)の10億分の1ワット
*詳細は2019年11月5日付ニュースリリースをご参照ください。
(2)2020年5月、建築設備綜合協会主催による第18回環境・設備デザイン賞において、大成建設㈱および井上リボン工業㈱との共同開発による、電池レス・ワイヤレス漏水検知システム「T-iAlert® WD」(※3)が、審美性などの「感性」に関する要素に焦点をあて、かつ「機能性」「経済性」と環境問題も視野に入れた「社会性」の4つの項目が評価され、優秀賞を受賞しました。
(※3)「T-iAlert® WD」について:
T-iAlert®は、大成建設㈱が計測・予測・評価に基づく安全安心の確保や災害防止などを実現するツールとして開発を進めている自動警報技術の総称で、今回の技術名称で使用しているWDは、水検知を示す英文表記(Water Detection)の略称。
* 詳細は2020年5月26日付トピックスをご参照ください。
グリーン商品基準の作成およびグリーン商品の創出
当社の様々な環境配慮の取り組みを考慮して、絶対評価あるいは競合製品との相対評価を盛り込んだグリーン商品基準をライフサイクル(LC)設計部会の審議を経て策定しています。 また、各製品の開発終了段階では、同じくLC設計部会において審査を行い、基準を満たした製品をグリーン商品として認定しています。
「ABLICグリーン商品認定フロー図」