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ホールICのイノベーションがIoTデバイスにもたらす変革
──1つで3つの状態の識別を可能にした「S-5718」のインパクトとは?
エイブリックが開発した「S-5718」シリーズは、革新的な機能を備えた低電圧・低消費電力・超小型のホールICです。このICによって、IoTデバイスの設計・開発がどう変わり、どのようなアプリケーション/サービス作りが可能になるのか。 S-5718シリーズが持つ可能性について考えてみます。
ホールICの限界を打ち破る
モノの動きや状態の変化を検知する技術として、磁気の強さを検知し、電気信号へと変換する「ホールIC」が有効であることは、前回のコラムで述べたとおりです。
ただ、従来のホールICには限界がありました。それは、基本的に2つの状態しか識別できないことです。
例えば、前回説明した「片極検知型」のホールICは、「N極検知」か「S極検知」かのどちらか一方で固定されています。そのため、N極かS極の「ある」「なし」しか検知できません。また、「両極検知型」のホールICも同様に2つの状態の識別が限界でした。
そんなホールICの限界を打ち破ったのが、「S-5718シリーズ」です。
このホールICは、入力信号に応じて検知極を切り替え、1つで「N極検知」「S極検知」「両極検知」のすべてに対応できます(『S-5718シリーズ──仕組みの概説』参照)。言い換えれば、S-5718シリーズは、1つのICで、「N極あり」「S極あり」「磁石なし」という3つの状態の識別を可能にしたのです。
動作検知の仕組みがよりシンプルに
では、3つの状態が識別できるS-5718シリーズによって、具体的に何が、どう変化するのでしょうか。
まず言えるのは、モノのさまざまな動作や状態の変化を、より少ないホールICで識別できるようになることです。
例えば、2in1型のPCを想い浮かべてください。このタイプのPCには、「閉じた状態」「開いた状態」「タブレットモード」の3つの状態がありますが、その識別に2つの状態しか識別できないホールICを用いた場合、最低でも1つの磁石と2つのホールICが必要になります。これに対して、S-5718シリーズならば、1つの磁石と1つのホールICで3つの状態をすべて識別できるわけです。
また、家電やおもちゃなどの設計・開発時には、装着したアタッチメントによって、本体の動作や効果音を自動で変化させたいと考える場合があるでしょう。
このようなときに、S-5718シリーズを使えば、より少ないホールICで、より多くのアタッチメント(の装着)を識別する仕組みが作れます。実際、2つのS-5718シリーズを使えば、“3×3”の9とおりの識別が、3つならば“3×3×3”の27とおりの識別が可能になるのです(いずれも、「磁石なし」を1とおりとしてカウントした場合)。
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広がるIoTデバイスの可能性
こうしたS-5718シリーズの活用によって、IoTデバイスの設計・開発の幅も、大きく広がるはずです。
例えば、野菜栽培に使われる温室の窓に開閉モジュールを組み込み、開閉状況をWi-Fiでインターネットに送り、スマートフォンなどから遠隔制御するIoTアプリケーションを開発するとしましょう。 この場合、その日の気温や太陽光の変化に応じて、窓の開き具合を制御したいというニーズが生まれるはずです。
このような場面でS-5718シリーズを使えば、窓の開閉角度を「閉まった状態」「やや開く」「全開」という3段階で制御できる開閉モジュールをシンプルに設計することが可能になります。同様に、家庭や病室のブラインドの角度を、その日の光量に応じて遠隔から3段階で制御する仕組みにも応用できるでしょう。
見守りの仕組みとして、病室のドアの開閉状態について、「閉じているか」「開いているか」だけを識別するのではなく、開き具合を3段階で識別しアラート通知することが可能になりますので、人が通れるドアの開き状態になる前に、Wi-FiやBluetooth経由で看護師のスマートフォンにアラート通知することで余裕をもって病室へ向かうといった見守りの仕組みも簡単に実現できるでしょう。
しかも、S-5718シリーズは、1つで3つの状態の識別を可能にしながら、最低動作電圧が従来製品の1.6Vから1.45Vへと大きく引き下げられています。さらに、エイブリックが提供してきた従来のホールICと同じく、業界最高水準の高密度実装を実現。パッケージとして「SNT-4A」(4端子、1.6×1.2×0.5mm)を採用しています。その点でも、省電力性・省スペース性が求められるIoTデバイスへの応用に適したホールICと言えるのです。
お客様とともに新たな価値の創出へ
前回のコラムでも触れましたが、エイブリックでは、「高精度磁気シミュレーションサービス」をはじめとする手厚い技術サポートを提供しているほか、お客様のニーズをヒアリングし、IC開発に活かす活動も積極的に展開しています。
是非、エイブリックとともに、IoT時代をリードする商品やアプリケーション、さらには付加価値の創出を進めていただきたい──。そう強く願っています。
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