ローサイド電流検出 | ハイサイド電流検出

1. ローサイド電流検出の設計例

S-19630AとR1~R4でローサイド電流検出回路を構成します。

電流センサの設計仕様

  • シャント抵抗値RSHUNT:
    1mΩ
  • 電流検出範囲:
    IDET = 0A ~ 20A
  • 電流検出精度
    オフセットエラー:
    ±0.1A以下(IDET=0A時)
    ゲインエラー:
    ±0.5%以下(IDET=20A時±0.1A以下)
  • 電流検出周波数:
    1kHz以上
  • S-19630A電源電圧VDD:
    5.0V
  • S-19630A利得帯域幅積GBP:
    1.2MHz
  • S-19630A負荷容量CL1:
    0.22μF
  • S-19630A出力電圧(IDET=0A時):
    0.5V(=REF電圧)
  • マイコンADコンバータ測定レンジ:
    0V~5.0V
  • 入力部ノイズ除去フィルタ カットオフ周波数Fc:
    10kHz

設計手順

ローサイド電流検出の回路図

設計手順1.ゲインの設定

S-19630Aの出力端子OUTの電圧がIDET=0A時0.5V、IDET=20A時5.0Vとなるようにゲインを設定します。
ゲイン=(5.0V-0.5V)/(20mV-0mV)=225倍
また設定したゲイン(225倍)、S-19630A利得帯域幅積(1.2MHz)より電流検出周波数は5.3kHzとなります。

設計手順2.R1~R4の設定

ゲインからR1~R4を設定します。
R1とR2は、大きな抵抗値に設定するとノイズの増加や測定誤差の増加の原因となるため100Ω~1kΩ程度の抵抗値に設定します。
今回はR1=R2=120Ωとします。すると、R3=R4=120Ω×225倍=27kΩとなります。

設計手順3.達成すべき電流検出精度よりR1~R4の抵抗比精度を選択します。

比精度0.5%選択時のオフセットエラー=0.10A、ゲインエラー=±1.0% : ×
比精度0.1%選択時のオフセットエラー=0.06A、ゲインエラー=±0.2%: 〇
電流検出精度の仕様より比精度0.1%の抵抗を選択します。

設計手順4.入力部ノイズ除去フィルタの定数(R1、R2、C1、C2)の設定

ノイズ除去フィルタ カットオフ周波数Fc(10kHz)、R1=R2=120ΩよりC1、C2を設定します。
Fc=1/(2×π×R1×C1) より
C1=C2=1/(2×π×R1×Fc)= 1/(2×π×120×10k)=0.15μF

設計手順5.S-19630Aの発振対策

①発振対策1
ゲインの設定および出力端子OUTの負荷容量CL1の設定によっては発振対策が必要となります。
S-19630Aデータシート記載の最大負荷容量CL(470pF)とは、ゲインの設定が1倍の時に出力端子に接続しても安定動作をする負荷容量の最大値のことです。最大負荷容量CLは以下の式の通り、ゲインの設定によって変わります。
CL=470pF×ゲイン
S-19630A負荷容量CL1>CLとなる場合は、発振対策が必要です。

本設計例では、
CL1=0.22μF
CL=470pF×225倍=0.11μF
であるため、CL1>CLとなり発振対策が必要です。

発振対策方法
(1)CL1を0.11μFより小さくなるように、例えば0.1μFへ変更します。または
(2)CL1と直列に100Ωの抵抗R5を挿入します。

本設計例ではR5(100Ω)を挿入します。

②発振対策2
ゲインの設定およびR1(=R2)とC1(=C2)の設定によっては発振対策が必要となります。
発振対策が必要となる条件は以下の式の通りです。
R1×C1>(1+ゲイン)/(2π×1.2MHz×10)

本設計例では、
R1×C1=120×0.15μ=18μ
(1+ゲイン)/(2π×1.2MHz×10)=3μ
であるため、R1×C1>(1+ゲイン)/(2π×1.2MHz×10)となり発振対策が必要です。

発振対策方法
以下の式を満足する容量C3をR3と並列に接続します。
C3>C1/(3×ゲイン+2)
本設計例では、ゲイン(225倍)、C1(0.15μF)より
C3>222pF
となるためC3(330pF)を接続します。

※発振安定性の確認方法
発振安定性の確認は、出力端子OUTの信号波形をオシロスコープで確認することを推奨します。
OUTの信号をフィルタに通した後の信号波形を確認した場合や、OUTの信号を電圧計で電圧計測した場合(平均化処理をした場合)は発振安定性を正しく確認できない場合がありますので注意が必要です。

エイブリックのオペアンプ製品では、お客様の回路設計段階での回路シミュレーションサービスのご提供など回路設計についてのご相談を承っております。お気軽に販売窓口までお問い合わせ下さい。

電流センサの設計結果

  • シャント抵抗値RSHUNT:
    1mΩ
  • 電流検出範囲:
    IDET = 0A ~ 20A
  • ゲイン:
    225倍
  • S-19630A出力電圧:
    0.5V(IDET=0A時)、5.0V(IDET=20A時)
  • 電流検出精度
    オフセットエラー:
    ±0.06A 以下(IDET=0A時)
    ゲインエラー:
    ±0.2% 以下(IDET=20A時±0.04A以下)
  • 電流検出周波数:
    5.3kHz
  • 過渡応答特性(IDET 0Aから15Aへと変化した場合のOUT電圧波形)

ローサイド電流検出波形

 


 

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