1. BLDCモータの中でのホールICの役割とは
BLDCモータ (ブラシレスDCモータ) において、ホールICはステータのコイルに流す電流をタイミング良く制御するためにロータの位置を検出しています。
ここではBLDCモータの中でのホールICの使われ方とホールICの求められる特性について紹介します。
2. BLDCモータの制御
BLDCモータの制御は図のようにロータの回転位置を検出し、モータコントロールドライバがコイルへ流す電流を切り替えることでモータを回転させます。
ここで重要なのがロータの位置検知です。
ロータの位置がわからないと、ステータとロータが適正磁束関係になる正確なタイミングで位相通電ができず、適切なトルクが得られません。
最悪の場合、モータは回りません。
磁束を検知し出力電圧が変化するホールICはロータの位置を検出するために用いられています。
3. BLDCモータ内でのホールICの配置
ロータの磁界を検知する3個のホールICの出力信号の組み合わせは図のように1回転360° (電気角) 内で60°毎に変わります。
この組み合わせに従ってコイルに流れる電流を切り替え、各相 (U, V, W) に120°間通電を行いS極 / N極を発生させます。
ロータとコイルに発生した磁気の吸引力、反発力により、ロータが回転します。
このようにホールICの出力タイミングに合わせて、ドライバ回路からコイルに通電制御を行う事で、適切な回転制御ができます。
4. ホールICの検知方式
ホールICは磁束を検知するICです。検知方式には一般的に次の3つの方式があります。
- 片極検知 (Unipolar): S極またはN極の磁界を検知
- 両極検知 (Omnipolar): S極とN極の磁界を検知
- 交番検知 (Bipolar): N極とS極の磁界を交互に検知
エイブリックは上記の3方式に加え、独自の検知方式を開発、採用しています。
- ZCL検知: S極からN極、N極からS極の極性が切り替わる点 (ゼロクロス点) を検知
BLDCモータが回転する時にホールICはS極、N極の磁界を交互に受けます。
この場合、ロータ位置検知用には交番検知、またはZCL検知のホールICが適しています。
≫ZCL®ホールICの詳細は「ZCLホールICとは」をご参照ください。
5. ホールICに求められる特性
ホールICはロータの回転位置を早く正確に検知することが求められます。
ホールICの出力信号の位相遅れが大きくなるとコイルで発生させた磁場によってロータに反発力を生じさせるタイミングが理想的なタイミングからずれてしまうため、モータの効率が低下してしまいます。
よって、ロータ位置を検出するホールICには、出力信号の位相遅れを小さくすることが求められます。
以下は位相遅れの原因となる例です。
- ホールICの動作点 (BOP) と復帰点 (BRP) とホールICが受ける磁束密度のばらつきによるタイミングずれ
- ホールICの出力遅延時間によるタイミングずれ
そのため、ホールICには以下が求められます。
- ロータの磁界の変化を正確に検出するため、動作点 (BOP)、復帰点 (BRP) の磁気検出ばらつきが小さいこと
- 位置情報のフィードバックを短時間で行う必要があり、ホールICの出力遅延が小さいこと
≫ホールICの選び方については「モータ別に選ぶエイブリックのおすすめホールIC」をご参照ください。
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